薄暗い市場の中を歩いている買い物客の姿は少ない。中には黙々と働いている人もいたけれど、市場には静けさは充満している。この市場の喧騒というものは、どこかに身を潜めてしまったかのようだ。歩いていると、なんだか地底に造られた町を歩いているような気がしてくる。もっとも、このうように感じたのは最近フィリップ・K・ディックの「地球防衛軍」という短編小説を読んだからかもしれない。小説の中で人類は放射線で汚染された地表を捨て、地底で生活していた。
写真の女性は薄暗い市場の中で仕事をしていたひとり。市場の片隅にある肉屋を切り盛りしていた。丸い木製の俎板を前に置いて、女性は手にした包丁で肉を捌いている。ミンチ肉を作っている最中のようだ。僕が興味深そうに前に立ち止まっても、チラッと僕を見ることさえしない。地表からやって来た見知らぬ人物の相手をできるほど暇ではないようだ。女性は一心不乱に肉をミンチにし続けていた。
2018年7月 人びと タイ | |
エプロン 肉屋 俎板 包丁 メークロン 肉 女性 |
No
10632
撮影年月
2017年9月
投稿日
2018年07月03日
更新日
2024年02月08日
撮影場所
メークロン / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA