赤坂をはじめ都内のところどころに建っているので、稲荷神社と同じように日本全国にあるのだと勝手に思っていたけれど、そうではなかった。氷川神社の総本社は埼玉の大宮に鎮座する大宮氷川神社で、そのほとんどが関東、かつての武蔵国に建っている。さらに意外だったのは氷川神社の名前の由来だ。氷川という名は出雲国を流れる簸川(現在の斐伊川)に由来するとされるのだ。
関東から斐伊川までは遠い。しかも氷川神社があるのは関東に限られていて、関東と斐伊川の流れる出雲の間に広大な氷川神社の空白地帯が広がっているのを考えると、どうして遠く離れた関東に氷川神社ができたのか不思議に感じてしまう。ぱっと見たところ、縁もゆかりもないところに突如として氷川信仰を持つ文化圏が現れるように思えるのだ。
そのように考えてしまうのは、僕が今現在の交通網で移動するのを念頭に関東地方と出雲のある山陰地方を捉えているからのようだ。岡本雅亨の「越境する出雲学」によると、出雲から北関東へいたる古いルートは山陰道も山陽道も東海道も中央道も通らない。海路を通るのだという。出雲から船で日本海を北上し能登半島の先端を回って越後に至り、そこから陸路で信濃から北関東に至ったのだという。そのルートに沿って出雲文化の痕跡が残っていて、氷川信仰もそのひとつなのだそうだ。
そんなこんなで目黒の八雲に建っている八雲氷川神社にやって来たものの、僕には出雲地方の薫りを感じられなかった。もっとも出雲を離れてもう長い。御祭神に出雲を感じることはあっても、もうすっかり関東に馴染んでいるに違いない。ふるさとは遠きにありて思ふもの、なのだ。
2022年12月 町角 東京 | |
狛犬 目黒 神社 傘 参拝客 |
No
12412
撮影年月
2022年9月
投稿日
2022年12月12日
更新日
2023年08月10日
撮影場所
目黒 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF