インドのナシークには、ゴーダーヴァリ川沿いに賑やかな市場が立っていた。そこはヒンドゥー教の聖地ラムクンドからそう遠くない場所で、巡礼者と商人が入り交じる、まるで宗教と日常が混ざり合ったような光景だった。スパイスの香りが漂い、果物や布を売る声が重なっている。そんな喧噪の中に、写真の老女と子どもがいた。
老女はサリーをまとい、皺の刻まれた手でひとりの幼い男の子を抱いていた。子どもは裸のまま、首に大きなビーズのネックレスをぶら下げている。おそらくは孫なのだろう。僕がカメラを向けると、老女は急に真顔になり、遊んでいた子どもを抱きかかえて前に立たせた。どうやら「写真を撮るならきちんと立ちなさい」とでも言いたげだった。宗教的な戒律の厳しい土地であるにもかかわらず、老女には不思議な寛容さがあった。
| 2011年3月 インド 人びと | |
| 男の子 おばあさん ナシーク ネックレス 上半身裸 |
No
5355
撮影年月
2010年9月
投稿日
2011年03月29日
更新日
2025年10月13日
撮影場所
ナシーク / インド
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM