つくづく狛犬は不思議だと思う。こうでなければ狛犬と呼ばないという厳格なルールはなく、なんとなく同じように見えても個性があって、それぞれの狛犬が作者の思うがままに作られているようなのだ。阿吽の狛犬もいれば、子に乳を与えている狛犬もいるし、玉をくわえているのもいるし、毬を持っているのも、そもそも犬ではないものもいる。それでいて狛犬というひとつのカテゴリーを形成していて、言ってみれば緩やかな連合体のようだ。
この日にやって来た神田明神にも、もちろん狛犬は鎮座している。1934年に竣工した鉄骨鉄筋コンクリートの社殿の前に、氏子有志により奉献された大きな狛犬が四肢を大地に踏ん張るようにして随神門の方を向いている。向かって左の狛犬は口をしっかり閉じていて、右の狛犬は開けているから阿吽を表しているようだ。
玉も鞠も抱えていない二頭の狛犬は、遊ぶ玩具もないせいか、じっと自らの職務に忠実だ。脇に立つ僕には目をくれることもなく、バッキンガム宮殿の衛兵のように真正面を向いたままだ。どちらも筋骨隆々だったから、万が一僕の存在を不愉快に感じたらあっという間に息の根を止められてしまうに違いない。
2022年8月 静物 東京 | |
狛犬 神田 神社 |
No
12351
撮影年月
2022年6月
投稿日
2022年08月14日
更新日
2023年08月11日
撮影場所
神田 / 東京
ジャンル
静物写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 1.8/85