多武峯という変わった名前の神社が新宿御苑の外側にひっそりと鎮座している。多武峯とは奈良県桜井市南部にある山で、藤原鎌足を祀った談山神社があり、鎌足の墓所も山頂にあるとされるところ。その昔、藤原鎌足が中大兄皇子と蘇我氏討伐の乙巳の変を企てたのがこの山なのだそうだ。つまり藤原鎌足が、後の藤原氏繁栄のきっかけになった乙巳の変を企画立案した場所が多武峯というところで、そこに埋葬されると同時に祀られていることになる。
その飛鳥時代の人物である藤原鎌足を祀った神社が、なぜ活躍した奈良から遠く離れた新宿の住宅街の中にあるのかというと、この場所がかつて高遠藩内藤家の下屋敷の敷地だったため。藤原氏の出自と称していた内藤家が、先祖の藤原鎌足を祀る談山神社から勧請して屋敷神として祀ったのが多武峯内藤神社の始まりだという。
その邸内社だった多武峯内藤神社が、時代が流れ明治政府によって内藤家下屋敷が接収されると少しだけ移動して敷地の外に出て現在地に遷座したらしい。多くの人に参拝されるには今では新宿御苑となった、もともとの場所に鎮座し続けた方が良かったのではないかと思う。そうすれば多くの来園者に詣でられたに違いない。今の境内は周囲を住宅に囲まれていて、静寂な場所といえば聞こえは良いものの、実際には寂しげなところだ。こんな住宅密集地に日本史の教科書に必ず登場する超有名人が祀られた神社があるのを知っている人はそれほど多くないだろう。境内に参拝客の姿はなく、閑散としていた。
2022年6月 建築 東京 | |
狛犬 内藤町 神社 石灯籠 |
No
12310
撮影年月
2022年4月
投稿日
2022年06月28日
更新日
2023年08月12日
撮影場所
内藤町 / 東京
ジャンル
建築写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35