上野動物園の入口と比べると上野にある東照宮の入口は地味だ。昔風情の売店の横にある鳥居がそれなのだけれど、知らないと通り過ぎてしまいそうだ。この石造りの明神鳥居は1633年に建てられた古いもので、重要文化財に指定されているとはいえ、いかんせん地味だ。上部に額束が見えるものの、そこには何も書かれていないため、この鳥居を抜けた先に東照宮があることはどこにも示されていない。
東照宮の人もそれは気にしているようで、最近はこの大石鳥居の辺りに上野東照宮の名を記した幟が幾つも立てられている。日本全国に数多ある徳川家康を東照大権現として祀る東照宮の中でも、上野にある上野東照宮はなかなかのもの。その絢爛豪華さから四大東照宮のひとつに挙げる向きもあるくらいだ。上野に行った際に訪れても損はしない。
大石鳥居を潜って真っ直ぐに参道を進んでいくと、次に現れるのは水舎門(みずやもん)だ。珍しい名前のこの門は多くの重要文化財を抱える上野東照宮の中での扱いは低い。公式ホームページを見ても、この門に関する記述は見当たらない。調べてみると、この門はその名が示している通り、かつては実際に社殿の手前右側にある水舎の屋根として使われていたもの。その水舎の上屋だけを1964年に門として現在の場所に移築したものなのだそうだ。上屋だけが古いからだろうか、1651年に老中の阿部重次より奉納されたという歴史があるものの、この門は重要文化財の指定を受けていない。
そうは言っても大石鳥居の額束に何も書かれていない代わりに、この門に掲げられている扁額にはしっかり東照宮と書かれているのを見ると、同輩から軽く見られながらも地道に働いているような印象を受けるのだった。
2021年9月 建築 東京 | |
漢字 門 神社 扁額 上野 |
No
12034
撮影年月
2021年2月
投稿日
2021年09月19日
更新日
2023年08月17日
撮影場所
上野 / 東京
ジャンル
建築写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF