台湾ではどこの道教寺院でも参拝客の姿が絶えない。有名な寺院でなくとも参拝客がいるし、ほとんどの人が真剣にお参りしていて、繰り返し繰り返しポエを放り投げて運勢を占っている人もいる。中には買い物袋を携えたままお参りしている人もいたりして、寺院が市民生活に溶け込んでいるのを感じるのだ。そのような状況に比べると、埼玉の坂戸にある台湾系の道教寺院である聖天宮にはそのような生活臭は漂っていない。建材も職人も台湾から運んできて建てた本格的な道教寺院は、ハードは本格的なのだけれど、ソフトに相当する参拝客は本格的ではないのだ。仕方がない。僕を始め、ほとんどの参拝客が道教の参拝方法に馴染んでいない。本殿前に赴いたところで、礼拝の作法を係員に教えてもらわないとわからない人間ばかりなのだ。
そもそもなぜ道教に親しんだ人の多い東京の新大久保あたりだとか、横浜の中華街あたりではなく、埼玉の坂戸(しかも駅から遠い)に道教寺院があるのは、日本で財を成した台湾人が地元である坂戸に建立したためだろうと勝手に想像をしていたところ、そうではないのが面白い。聖天宮を建立したのは、台湾人貿易商の康國典という台湾生まれで中国大陸でのビジネスで財を成した人物で坂戸とは関係ない。それが大病を患った際に台北の指南宮で願掛けをしたことにより完治したことから、お礼のための寺院を建てようと建立地を探していたところ、坂戸にというお告げがあったからここにしたというから驚きだ。坂戸とは縁もゆかりもない人がお告げにしたがって、この地に本格的な台湾様式の寺院を建立したなんていうおとぎ話のような話が現代日本に存在するのだ。
2023年2月 建築 埼玉 | |
龍 門 坂戸 寺院 |
No
12439
撮影年月
2022年10月
投稿日
2023年02月02日
更新日
2023年08月09日
撮影場所
坂戸 / 埼玉
ジャンル
建築写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF