田んぼと田んぼの間に伸びるあぜ道のような参道の先に階段があって、それを上がると山門が建っている。山門をくぐってさらに階段を上っていくと、そこには古めかしいお堂が建っている。王禅寺の観音堂だ。この堂宇の中に1608年に造られた聖観音菩薩像が鎮座しているのだ。
王禅寺では毎月17日を「観音様の日」とし、観音堂を開扉しているものの、堂内で本尊を拝めるのは子年の開帳期間だけ。つまり12年に一回しか拝められない秘仏なのだ。僕がやって来たのは、ねずみ年でもなければ開扉される日でもない普通の日。もちろん観音堂の扉はしっかりと閉じられたままで、聖観音菩薩像はおろか内部の様子さえ垣間見れなかった。
霊験あらたかな仏像であればあるほど、少しでも多くの人の目に触れればそれだけ人を救うのに繋がるような気がするけれど、それはどうやら素人考えのようだ。日本大百科全書によると秘仏とされる理由にはいくつかあって、霊験あらたかであるが故に逆にひと目から隠し特別な尊崇を払うようにしている場合、グロテスクあるいはエロティックすぎて一般の公開がはばかられている場合、災害などで像が損傷を受けたりして公開できなくなっている場合などがあるのだという。
王禅寺の聖観音菩薩像は12年に一度とはいえ御開帳されるので、損傷しているわけでもなく、卑猥なわけでもない。わざと隠して特別感を演出しているパターンだ。演出していると書くとちょっと嫌らしさを感じてしまうけれど、毎日毎日ご尊顔を拝めるよりも12年に一回しか拝めないとされた方が、確かに有り難みを感じてしまう。
2022年5月 町角 神奈川 | |
参道 門 川崎 寺院 |
No
12269
撮影年月
2022年3月
投稿日
2022年05月18日
更新日
2023年08月13日
撮影場所
川崎 / 神奈川
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35