不忍通りに面して建っている仁王門を越えて、しばらく参道を進んでいくと、本堂へ辿り着く前に急な階段が待ち構えている。ここは大塚にある護国寺。かつて徳川幕府の祈願寺だった寺院だ。
階段の上に不老門がそそり立っていて、本堂に向かう人びとが次々と門に吸い込まれていく。参拝客が急な階段を登り切って門をくぐっていく様子を眺めていると、まるでこの門が登竜門であるかのような気がしてくる。登りきれれば、たとえ鯉であっても竜になれるという伝承のある例の門だ。
ここでふと気が付くのは、僕がずっと登竜門を登竜という名前の門だと思っていたこと。イメージでは登竜門という門の扉を開けてくぐることができれば、立身出世や人生の岐路でチャンスを掴めるというものだった。でも元になった故事は違う。日本大百科全書によれば、竜門とは門ではなく「中国の黄河中流(山西省河津県と陝西 (せんせい) 省韓城県との間)の急流」だという。この急流を登りきった鯉は竜に化けるという伝承が元になっているのだ。
でも門という漢字が使われているせいで、ずっと登竜という名前の門があるのだと思っていた。漢字がイメージに与える影響は馬鹿にならない。さすがは世界で唯一使われ続けている表意文字だ。
2022年5月 町角 東京 | |
門 大塚 シルエット 空 寺院 |
No
12279
撮影年月
2022年3月
投稿日
2022年05月28日
更新日
2023年08月13日
撮影場所
大塚 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35