亀有から中川を越えて向かった先は柴又帝釈天だった。夏目漱石の「彼岸過迄」など多くの文芸作品に登場し、古くから名所として扱われていた寺院だけれど、東京観光の定番として名を上げたのは映画「男はつらいよ」シリーズが制作されて以降のこと。映画の中で柴又帝釈天の門前町が主人公・車寅次郎の生まれ故郷に設定されたからだ。映画化前のテレビドラマを含めて50年以上にわたってシリーズが制作され続けた結果、今では柴又帝釈天と「男はつらいよ」は切っても切れない関係になっている。柴又といえば寅さんだし、寅さんといえば柴又だ。最寄りの柴又駅前にも車寅次郎とそれを見送る妹さくらの像が立っている。
長いこと続いた人気シリーズも、主人公を演じた渥美清の死去にともない制作されなくなってしまった。「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎はジェームズ・ボンドやスーパーマンと違って、渥美清しか演じたことがないから仕方がない。他の俳優が演じても、あまりにも渥美清のイメージが強すぎて、車寅次郎になれないのだろう。車寅次郎は俳優渥美清と一緒に死んでしまったのだ。それくらい渥美清と車寅次郎は固く結びついているのを考えると、寅さんを前面に出して町おこしを行っていた柴又帝釈天参道の先行きはどうなのだろう。いくら人気映画シリーズとはいえ、時代とともに忘れ去られてしまう可能性が高い。その結果、柴又帝釈天も東京観光の定番から単なる名所に戻り、元の鞘に収まるのかもしれない。
2022年12月 建築 東京 | |
装飾 門 柴又 寺院 |
No
12422
撮影年月
2022年9月
投稿日
2022年12月29日
更新日
2023年08月10日
撮影場所
柴又 / 東京
ジャンル
建築写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF