プロペラ機が孔子廟の屋根にいる龍のはるか上空を飛んでいた

飛行機と龍
孔子廟の上空を飛ぶ飛行機

温かい雨が降りそうな台北の街を歩き、孔子廟へとやって来た。ここは儒教の開祖である孔子を祀る神聖な場所だ。しかし、どういうわけか上空の風情がすこぶる騒がしい。それもそのはず、この廟は市街地にある松山空港の航空経路のほぼ真下に位置している。境内に立って空を見上げていると、ひっきりなしに飛行機が爆音を響かせて通り過ぎていく。孔子といえば「怪力乱神を語らず」とした至聖先師である。まさか自分の死後二千年以上が経ってから、頭上を巨大な鉄の塊が忙しく行き来することになるとは夢にも思わなかったろう。学問の神様も、これでは落ち着いて読書もできない。僕は彼に同情を禁じ得ないのだ。

著者 : 楊双子
中央公論新社
発売日 : 2023-04-25

その騒がしい境内の庭に佇んでいると、曇天の向こうからまた一台の機影が近づいてきた。今度はジェット機ではなく、ふたつのプロペラを回した双発のプロペラ機である。思いのほか低空を飛んでいる。機体の形がはっきりと分かるほどに大きい。プロペラ機といえば、ジェット機よりも燃費が良い。短い滑走路でも離着陸できるため、国内線や離島便では今でも重宝されているらしい。その実用的な鉄の鳥は、お堂の屋根飾りの遥か上空を、何食わぬ顔で悠々と横切っていく。

その悠々と横切っていくプロペラ機の影を、屋根の端からじっと見つめている者がいた。それは、中国の伝統的な建築には欠かせない、鋭い爪を持った龍の装飾である。龍は本来、水を司る神聖な幻の獣だ。天に昇って雨を降らせる絶大な力を持っているはずである。しかし、この屋根の上の龍は、粘土を焼いて作られたただの飾り物だ。どんなに大空へ羽ばたきたいと願ったところで、一歩も動くことはできない。ただ大きく口を開けて、自分より遥か高くを飛ぶ近代文明の利器を、呆然と見送るばかりであった。

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ENGLISH
2007年4月 町角 台湾
飛行機 屋根 シルエット 台北 寺院

PHOTO DATA

No

831

撮影年月

2007年1月

投稿日

2007年04月08日

更新日

2026年06月12日

撮影場所

台北 / 台湾

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

CANON EOS 1V

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