愛知県の犬山にある三光稲荷神社は歴史のある大きな神社のようだけれど、日本橋堀留町にある同じ名前の神社は比べるのもおこがましいほど小さな神社だった。神社の前の路地に鳥居がなければ、誰かの住居だと思ってしまいそうなくらい質素な社殿が猫の額ほどの境内に建っている。
飼い猫が行方不明になったときにこの神社でお参りすれば、ご利益として猫が無事に帰ってくるとされているらしく、社殿の脇に置かれていた棚には飼い主たちが奉納した招き猫が並べられている。いくつも並べられているところを見ると、この神社の霊験によって無事に猫が帰ってきた人は多いようだ。
自分の飼い猫でなくとも迷い猫が戻ってくるのは喜ばしい。けれど飼い主の元に戻れて喜んでいるわけでもなく、片手を上げて虚無の表情をしている猫が並んでいるのはちょっと怖い。ここはビルの谷間で誰からも見えない神社の境内だ。人知れず招き猫たちが蠢いても誰も気が付かないに違いない。気を抜くと全体主義のように同じポーズを取っている猫たちが、こっそり違うポーズを取っているような気がしてしまい、前を閉じてお参りしている最中も気になってしまった。
無事にお参りを終え、路地のような参道を進んでいくと磨かれたビルの壁で左右対称の世界が広がっていた。ひょっとしたらこれも神社の霊験なのかもしれない。
2023年1月 町角 東京 | |
日本橋堀留町 歩行者 反射 壁 |
No
12433
撮影年月
2022年10月
投稿日
2023年01月23日
更新日
2023年08月09日
撮影場所
日本橋堀留町 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF