道端にクリーム入りの壁が続いていた。そして、壁の前にベチャが駐められていた。ベチャとはジャカルタを走っている自転車タクシーだ。このベチャには座席に誰も腰掛けておらず、ペダルを漕ぐ人が腰掛けるサドルにも誰も腰掛けていない。ベチャの車両だけが道端に放置されていた。じっと見ていると車体の向こうに見えるクリーム色の壁はなんだかホリゾントのようにも見えてきて、このベチャが何かの撮影会のために置かれているようにも見えてしまう。
自転車に座席を取り付けて人を運ぶベチャの歴史はそれほど古いものではない。ジャカルタで一般的になったのは第二次世界大戦後のことだという。安くて便利であったため、爆発的に普及したものの、モータリゼーションが起こり始めると、逆にその流れに取り残されてしまっている。モーターのパワーと人力で動く自転車では勝負にならない。そして、道を走る主役が自動車になった今、通りをのんびりと走るベチャは排除の対象にさえなっているのだ。
ジャカルタでは、住宅街など下町を除いてこのベチャという乗り物は走ってはならないことになっている。ベチャが大きな通りを走っていると、ただでさえ酷い交通渋滞がもっと酷くなってしまうと考えられているのだ。そのため、このベチャが走っているのを見かけるのは、大通りから脇にそれて観光地でもなんでもない住宅街の中をウロウロと彷徨っている時だけだった。
2020年11月 インドネシア 乗り物 | |
ベチャ サイクルリクシャー ジャカルタ 壁 |
No
11733
撮影年月
2020年1月
投稿日
2020年11月18日
更新日
2023年08月30日
撮影場所
ジャカルタ / インドネシア
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF