千葉県佐倉には、かつて江戸時代に諸藩の中で最も多くの老中を輩出した佐倉藩があった。この事実から、現在の佐倉に磨崖仏が残っていても不思議ではないと思ってしまったのだ。しかし、冷静になって考えれば、佐倉城が「老中の城」と称されたことと、岩壁に石仏が造立されていることには関連性はない。佐倉には日本の歴史、民俗学、考古学を総合的に研究・展示する国立歴史民俗博物館があり、その展示品として磨崖仏がある可能性に気がつかずに、僕は佐倉にある臼杵古園石仏大仏如来像に向かったのだった。
臼杵古園石仏大仏如来像に向かった理由は、仏像が好きというわけでもないのに、磨崖仏には興味があるからだ。大地に人工物を刻むというスケールの大きさと、失敗したら取り返しのつかないという緊張感に惹かれ、磨崖仏があると聞くと思わず赴いてしまう。インドではアジャンター石窟群とエローラ石窟群にも行ったし、中国では敦煌莫高窟にも行った。そして、この日は佐倉の磨崖仏に向かったというわけだ。
意気揚々とやって来た佐倉にある臼杵古園石仏大仏如来像は期待はずれだった。そもそも本物ではなかった。佐倉城址公園で雨ざらしにされているとはいえ、国立歴史民俗博物館の所蔵するレプリカだったのだ。国宝に指定されている磨崖仏が実際に残っている大分県臼杵のことを知らなかったために、佐倉にある臼杵古園石仏大仏如来像を、実際に目の前にするまで本物と思っていたのだ。迂闊だった。とはいえ、目の前に巨大なレプリカが空から降ってきたかのように置かれた姿はシュールで、わざわざ見に来た甲斐があったと自分を納得させたのだった。
2023年4月 千葉 町角 | |
仏像 公園 佐倉 |
No
12480
撮影年月
2023年1月
投稿日
2023年04月16日
更新日
2023年08月08日
撮影場所
佐倉 / 千葉
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF