ここのところ人混みに対する免疫がめっきり低下してしまったせいか、単なる心境の変化なのかよくわからないけれど、美術館の企画展ではなく常設展にも興味が向いてきた。コロナ禍になってからというもの、美術館でも日時予約制のところが増えて、以前のように行列に耐えてチケットを買った上に満員電車のような状況で鑑賞しなければならない事態になることはほとんどない。とはいえ企画展は常設展に比べたらやはり混んでいる。展示されている作品に没頭するなら断然常設展に行くのがいい。
例えば根津美術館が所蔵する如来立像。6世紀に造られた高さ3メートル近い石像は企画展室の入り口のすぐ横に突っ立っていて、企画展室に入る人の視界に否が応でも入るはずなのに石像の前に足を止める人は少ない。耳目を集めているとはお世辞にもいえない状況だ。そんな石像もじっと見ていると素人なりに気がつくことがある。根津美術館の公式HPに写真も載っている如来立像は、写真と実物では印象が異なるのだ。
その原因は頭部の大きさだ。HPの写真では頭部が大きく見えるのに対し、美術館で現物を鑑賞するとそれほど頭部が大きい印象は受けない。HPの写真はちょっと上から撮ったため頭部の大きさが強調されている一方で、現物を鑑賞する際は足元から見上げる形になるので頭部は強調されないのだ。この石像がどのような場所に鎮座していたのかは知らないけれど、おそらく参拝者は足元から見上げるような形で対面したに違いない。製作者はそのような位置関係を考慮した上で体のバランスを決めたのだ。
このような捉え方が正しいのかは分からない。でも石像ひとつでいろいろ妄想が膨らんだら楽しい。新たな疑問点が浮かんだりしても、気軽にまた見に行けるのも常設展の利点のひとつ。企画展で展示されていた作品で同じことをしようとしたら、海外まで足を伸ばさなければならない可能性もあるのだから。
2022年8月 静物 東京 | |
青山 仏像 博物館・美術館 |
No
12358
撮影年月
2022年3月
投稿日
2022年08月25日
更新日
2023年08月11日
撮影場所
青山 / 東京
ジャンル
静物写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35