台南にある鴨母寮市場は活気に満ちていて、魚屋の男も忙しそうに働いていた。丸い木製の俎板の上には、虱目魚(サバヒー)と思しき魚が置かれていて、男はその身に切れ目を入れているところだった。台南の市場では虱目魚が売られているのをよく見かける。日本ではあまり馴染みがない魚だけれど、この地では非常にポピュラーな存在だ。
虱目魚の身には、まっすぐな切れ目が規則正しく入れられているのが見える。男は一心不乱に手を動かしており、僕の存在にはまったく気づいていないようだった。もしかすると、僕がすぐそばに立っていることすら認識していないのかもしれない。
その手際の良さは見事で、つい見とれてしまった。何気ない市場の日常の一場面が、職人技の輝きを放っているように思えた。ただひとつ気になったのは、男が色違いの手袋をはめていることだった。片方は青、もう片方は黄色。あまりにも忙しすぎて、手袋を揃えることに気を回す余裕がないだけなのか、それとも何か特別な理由があるのか、答えが分からないまま僕はその場を後にした。
2017年4月 人びと 台湾 | |
魚 魚売り グローブ 包丁 市場 台南 |
No
10098
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年04月06日
更新日
2024年12月25日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA