またしてもバンコクの中心部にあるエラワン廟へとやって来た。一日をここでお祈りして始めるのも悪くない。そう思う人は多いようで、エラワン廟は早朝から大勢の参拝客で賑わっている。これだけ大勢の人が何かしらのご利益を求めにやって来ているのを眺めていると、バンコクという大勢の人が住んでいる大都市には悩みもやはり数え切れないくらい沢山うごめいているのだと思ってしまう。もっとも悩みが溢れているとしても、中央に鎮座する黄金のブラフマー像は動じることはない。静かに座っているだけだけれど。
エラワン廟の入り口に目を向けると、横に小鳥の入った鳥籠が置いた女性が門の脇に腰を下ろしていた。この女性はエラワン廟と一体かのような顔をしているけれど、実は廟とは全く関係ない。でも、廟に関係のあるような顔でそこで商売をしている。女性の商売は参拝客に放生をさせることだった。
放生とは捕獲した魚や鳥獣を放し、殺生を戒める宗教儀式だ。もともとは古代インドに起源をもつ儀式で、日本では神道にも取り入れられていたりする。東南アジアではこの女性のように、寺院の門前に小鳥の入った籠を抱えている人がいるのも珍しいことではない。女性はお金を受け取って鳥籠の中の鳥を放つことで、参拝客が功徳を積めるようにしているという訳だ。
一般的には放生は仏教の儀式とされているようだけれど、ここはヒンドゥー教の廟だ。ヒンドゥー教の廟の前で行われる仏教の儀式。ちょっと興味深い。ここでも、タイにおける仏教とヒンドゥー教の習合の一端を垣間見たような気がした。
2020年4月 町角 タイ | |
バンコク 鳥 鳥籠 神社 |
No
11494
撮影年月
2019年9月
投稿日
2020年04月19日
更新日
2020年11月07日
撮影場所
エラワン廟 / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III