後ろめたいことは何もないのにビシッとスーツに身を包んだ人間に行き先を問われると、口ごもってしまう。なぜだろう。レバノンのベイルートでクラブに入ろうとしたら「お前のような奴が来るところではない」と断られたのを思い出すのか、マレーシアのクアラルンプールで高級ホテルに入ろうとしたら「何をしに来た」とドアマンに問われたのを思い出すのかわからないものの、僕の心拍数がちょっと上昇するのは確かだ。
銀座八丁目に建つ東京銀座資生堂ビルに足を踏み入れたときもそうだった。中に入るやいなやスーツ姿の男性に行き先を訊かれたのだ。口ごもりながらギャラリーと答えると、ピンとした姿勢で男性はギャラリーへ続く階段のある方を指し示してくれる。現存する日本で最古の画廊といわれている資生堂ギャラリーは、真っ赤な東京銀座資生堂ビルの地下にあるのだった。
この時の展示は中島伽耶子の作品だった。ギャラリーを分断した大きな壁からアクリルの破片のようなものがいくつも飛び出している。キラキラと輪郭を光らせるアクリルは、なんだかヘッドセットで見る仮想現実のようで、触って怪我してしまうまでそこに本当にあるのかどうか自信が持てないようなものだった。
2022年1月 町角 東京 | |
作品 人影 ギャラリー 銀座 |
No
12146
撮影年月
2021年11月
投稿日
2022年01月15日
更新日
2023年08月16日
撮影場所
銀座 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF