17世紀に黄金時代を迎えたオランダ絵画には小さなサイズの作品が多い。例えば、日本でも人気のフェルメールの作品にも50センチ×40センチ程度のものが多い。これは絵画の購買層が大金持ちに限られていなかったからだ。当時のオランダは、オランダ東インド会社が香辛料貿易で莫大な利益を上げると同時に、銀行や証券取引所の設立によって国際金融の中心にもなっており、ヨーロッパの中でも繁栄した国だった。そのため資産家だけでなく庶民であっても家庭を飾るための絵画を購入する風習があったからなのだ。
古今東西、資産家が住む家は大きくとも、庶民の住む家はそれほど大きくはない。そのため絵画を庶民の家に飾るには小さなサイズでなくてはならなかった。大きなサイズの絵画は飾るスペースがないのだ。画家たちは、このニーズに応えるために小さなサイズの絵画を制作していたのだ。これは宮殿や教会で展示することを念頭に置いて制作されることの多かったイタリアなどにはない考え方だった。
オランダ絵画のように芸術作品がその時代の居住環境に制約されてしまうのは仕方のないこと。そう考えると、現代の日本家屋には屏風が合わなくなってしまったのかもしれない。屏風は部屋の仕切りや装飾に用いる調度品で、日本美術といえば金銀で彩られた屏風を思い浮かべる人も多いかもしれない。しかし、この現代日本で屏風を置けるような広い家に住んでいる人がどれくらいいるだろうか。もう屏風は過去の遺物になってしまっているような気がしてしまう。東京の京橋にあるアーティゾン美術館で展示されていた狩野典信(かのうみちのぶ)の「松梅図屏風」も、荘厳に輝いているものの、厳重なガラスケースの向こうに仕舞われていて、単なる調度品と言うより考古学の範疇に含まれているかのように扱われていた。
2023年3月 町角 東京 | |
作品 薄暗さ 京橋 博物館・美術館 シルエット |
No
12457
撮影年月
2022年12月
投稿日
2023年03月07日
更新日
2023年08月09日
撮影場所
京橋 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35