一組の男女で切り盛りしている魚屋は、鴨母寮市場でも特に人気のある店のようだった。店先には大勢の客が順番待ちの列を作り、我先にと魚を求めている。その光景から、店の繁盛ぶりがひと目でわかる。
魚屋のふたりは、無言のままテキパキと作業を進めていた。忙しさの中で無駄口を叩く余裕などなく、ひたすら魚を捌き、注文をさばいていく。その熟練の手つきは見事で、手元の動きには一切の無駄がない。
店先の客たちは、黙々と魚屋の手許を注視している。その集中した視線が、魚を捌く手元をまるでマジシャンのテーブルマジックを見守る観客のように感じさせた。魚屋の動きに魅了されているようだった。
しかし、そんな中でひとりの女性だけは違っていた。彼女は魚屋の手元ではなく、カメラを手にした僕をじっと見つめていた。その視線に気づいた瞬間、忙しさと活気が満ちる店の中に、少しだけ異質な静けさが流れ込んだように感じられた。
2017年4月 人びと 台湾 | |
客 魚売り 市場 台南 鴨母寮市場 |
No
10103
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年04月11日
更新日
2024年12月23日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA