前掛けをした女性が、鴨母寮市場で仕事に取り掛かろうとしていた。目の前の俎板の上には、一羽の鶏が横たわっている。女性の手には毛抜きが握られていて、真剣な表情で、どこから作業を始めようかと考えているようだった。鶏に残った産毛を丁寧に取り除こうとしているのだ。
それは、とても地味で気の遠くなるような作業だ。でも、美味しく食べるためには欠かせないひと手間なのだろう。僕は子供の頃、鶏肉を食べようとして産毛が残っているのを見つけ、途端に食欲を失った経験がある。その記憶がふと蘇った。
それにしても、中国文化圏における食に対する意気込みには感嘆せざるを得ない。美味しい料理を作るためには、手間暇を惜しまないのが当たり前という考えが根付いているのだ。目の前で鶏の産毛を丁寧に取り除く女性の姿に、その精神が凝縮されているように感じられた。
2017年4月 人びと 台湾 | |
鶏・鶏肉 市場 台南 女性 鴨母寮市場 |
No
10102
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年04月10日
更新日
2024年12月23日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA