落語の芝浜の舞台だった雑魚場からそれほど離れていないところに一軒の古い木造建築が建っている。港区立伝統文化交流館だ。これは第二次世界大戦後、長らく港湾労働者の宿泊所として使用されていたものだが、もともとは1936年に花柳界の見番として建設された建造物。今では芝浦と聞いて歓楽街を思い起こす人は少ないけれど、かつては花街があったのだ。明治時代後期から大正時代にかけて今の芝浦が埋め立てられたのを期に、現在のJRの線路の北側にあった花柳界が芝浦に移ってきたのだという。
しかしながら芝浦の花柳界は長く続かない。第二次世界大戦が勃発すると花柳界自体が疎開して芝浦からなくなってしまうのだ。そのため1944年には東京の所有になり、港湾労働者の宿泊所になってしまったというから、料理屋・芸者屋・待合の事業者が集まってつくる三業組合の事務所として使われたのは10年にも満たない。僅かな期間しか使われなかったのに、今でも保存されているのは作りがいいからなのだろう。花柳界の女性たちの稽古が行われた百畳敷の格子天井や細かい細工を施した窓枠、手すりなど意匠を凝らしたデザインから建設当時の華やかな雰囲気が伝わってくる。廊下の窓枠のデザインもさり気なく洒落ていた。
2023年1月 建築 東京 | |
芝浦 窓 |
No
12425
撮影年月
2022年10月
投稿日
2023年01月09日
更新日
2023年08月10日
撮影場所
芝浦 / 東京
ジャンル
建築写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF