行田に水城公園という公園がある。それほど広い公園ではないものの、この公園が忍城の外堀跡に造られたものだと聞くと、かつて利根川を利用した水攻めにも耐え抜いた忍城が浮城と呼ばれたのも納得だ。今では想像するしかないけれど、広々とした外濠にそびえる忍城は水の中に浮いているように見えたに違いない。
外濠だった公園を歩いていると、お城だった歴史と不釣り合いな外観を持つ建物が視界に入ってきた。旧忍町信用組合店舗だ。この木造洋風建築は、1922年に建てられた店舗を2018年に現在の場所に移築したもので、このような様式を「下見板コロニアル様式」と呼ぶらしい。明るい緑のペンキで塗られた外観を持つ建物は、園内で仲間はずれの孤高な存在になっている。
「下見板コロニアル様式」のコロニアル様式は「植民地様式」とも呼ばれる、植民地時代のアメリカの建築様式を指し、「下見板」は板材を横に重ね張りした未塗装の外壁を指している。かつての日本では北海道の開拓使設置に伴い、同じ木造文化圏のアメリカの技術援助を受け、アメリカの建築様式と工法からなる木造建築の導入が推し進められたらしい。このアメリカの影響下で生まれた建築を「下見板コロニアル様式」と称するのだ。もともとアメリカで発達した建築様式だから日本らしくないのも当然で、眺めているとウェス・アンダーソンの映画に登場しても不思議ではないような気がした。
2023年11月 建築 埼玉 | |
カーテン 行田 公園 色鮮やか 窓 |
No
12537
撮影年月
2023年5月
投稿日
2023年11月15日
撮影場所
行田 / 埼玉
ジャンル
建築写真
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF