熱海市はいい買い物をしたと思う。何をかって?それはもう起雲閣に決まっているでしょう。もともとは海運業で財を成した内田信也の別邸として築かれ、三菱財閥の岩崎別荘、今はなき住友別荘と並び、熱海の三大別荘と賞賛されたもの。1947年に金沢でホテル業を営んでいた桜井兵五郎に買い取られて以降は起雲閣という旅館だったところだ。
旅館になってからの起雲閣は熱海を代表する宿となり、山本有三や志賀直哉、谷崎潤一郎、太宰治、舟橋聖一、武田泰淳など日本を代表する文豪たちが度々宿泊したという。太宰治が人間失格を執筆したのも、ここ起雲閣の大鳳の間だそうだ。そのような由緒ある起雲閣も1990年代末期には経営が行き詰まり、2000年には熱海市が購入することになる。その結果、文化資産が保存され観光資源になったのだからいい買い物だったのではなかろうか。
起雲閣という名称と旅館であったという歴史から敷地に建つ建物は日本建築だけのようなイメージを持ってしまうかもしれない。実際には2代目所有者だった根津嘉一郎(根津美術館はこの人のコレクションを保存・展示するために造られた)によって建てられた洋館も建っている。写真はその洋館の窓越しに外を眺めたところだ。洋館だからカーテンが掛けられているものの、外に広がるのは枝ぶりのいい松もある日本庭園だった。
2021年12月 建築 静岡 | |
熱海 カーテン 木 窓 |
No
12122
撮影年月
2021年10月
投稿日
2021年12月16日
更新日
2023年08月16日
撮影場所
熱海 / 静岡
ジャンル
建築写真
カメラ
RICOH GR III