函館元町のカトリック教会とロシア正教会の間に伸びる道は観光名所になっていて、大勢の観光客が闊歩していた。大勢の人がいると言っても、混雑するほどではない。ただ八幡坂の頂上だけは別だ。ここは真っ直ぐに下る坂道の先に函館港が見える眺望スポット。誰も彼もがスマホを取り出し坂の下に向かってレンズをかざしている。一枚か二枚程度の写真を撮るだけならば、それほど時間はかからない。しかし何を撮っているのだろう、何が現れるのを待っているのだろうと不思議に思ってしまうほど、ひとりひとりがスマホを構えている時間は長い。横でじっと場所が空くのを待っている僕には永遠にも感じられるくらいだった。
写真撮影の順番待ちをなんとか乗り越えて、さらに道を進んでいくと元町公園にたどり着く。ここには僕の目的地である旧函館区公会堂が建っている。函館区公会堂は住民の集会所・商業会議所の事務所として建てられた明治期の洋風建築だ。水色と黄色で彩られた外観は瀟洒で遠くからでも目立つ。公共の建物というと、無難な外観をしたものばかりだと思っている偏見を見事に打ち砕いてくれる個性的な出で立ちなのだ。
旧函館区公会堂の目玉はなんと言っても2階からの眺望だ。大広間にあるバルコニーからは眼下に函館港が見えて清々しい。窓越しに函館港の様子を収めようとしていたら、タイミングを図ったかのように清掃人が現れて窓を拭き始めた。素晴らしい眺望も、窓拭く人にとっては日々目にしていて飽き飽きしてしまったものかもしれない。ちらりとも背後を向くことなく、せっせせっせと窓を拭き続けていた。
2022年9月 北海道 町角 | |
掃除 函館 窓 |
No
12373
撮影年月
2022年6月
投稿日
2022年09月19日
更新日
2023年08月10日
撮影場所
函館 / 北海道
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35