「本郷もかねやすまでは江戸のうち」と川柳で詠まれた「かねやす」が本郷三丁目の交差点に建っているのを考えると、詠まれた当時の江戸は今の東京と比べるととても狭い。江戸城の本丸から、かねやすまでの距離はわずか2キロほど。想像していたよりもずっと江戸の範囲は狭い。
かねやすまでが江戸だとすると、今となっては東京の真ん中にあるような気がする不忍池はもちろんのこと、東大の本郷キャンパスも江戸の外になるし、この日に訪れた不忍池と本郷キャンパスの間に建つ麟祥院という寺院も江戸の外ということになる。
この麟祥院には有名人のお墓があるものの、その存在は地味だ。僕が訪れたときも参拝客の姿はほとんどなかった。穏やかな境内で本堂を横切って墓地の中に入っていくと、ひときわ立派な墓所が建っている。塀で囲まれたような墓所の主は春日局。そう麟祥院には江戸幕府の第3代将軍・徳川家光の乳母である春日局のお墓があるのだ。
有名人のお墓であるにもかかわらず、お参りする人があまりいないのは春日局のお墓にお参りしたところで何のご利益があるのかはっきりしないからではないだろうか。例えば、義賊として伝説化した鼠小僧がなかなか捕まらなかったことから、勝負運や金運があると信じられているのに対し、春日局のご利益は何なのかわからないのだ。歴史に名を残し、400年後の人間にも名を覚えられているような人物なのに、プロデュースの仕方が悪かったとしか考えられない。
2022年8月 静物 東京 | |
墓地 石灯籠 寺院 湯島 |
No
12349
撮影年月
2022年6月
投稿日
2022年08月12日
更新日
2023年08月13日
撮影場所
湯島 / 東京
ジャンル
静物写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 1.8/85