大抵の場合、古びた神社仏閣の境内というものは、やたらと威圧的な造りをしている。山門の両脇には筋骨隆々の金剛力士像などが立ち塞がり、参拝者をギョロリと睨みつけているのがお決まりだ。神聖な場所に邪悪なものを寄せ付けないためだという。もし門番が弱々しい姿であれば、悪霊の類も遠慮なく土足で上がり込んでくるだろうから、防犯の理屈としては極めて合理的である。そんなもっともらしいことを考えながら、僕は鎌倉を代表する禅寺である建長寺の境内を歩いていた。
その建長寺の境内を当てもなく歩いていると、妙なものに行き当たった。古めかしい本堂の縁側に、小さなフクロウの像がぽつんと置かれているのだ。どう見ても本堂に安置されている立派な地蔵菩薩坐像を護るような代物ではない。ただでさえ小さな猛禽類である上に、そのプラスチックめいた風貌には微塵の威厳もなく、仏法を護るにはあまりに力不足に見える。
その力不足に見えるフクロウは、そもそも中の坐像には見向きもしていない。フクロウという鳥は頸椎の数が多く、首が左右に270度も回るという無駄な雑学を僕は知っている。だが、この置物の首は傾げたまま完全に硬直しており、ずっと明後日の方向をそっぽ向いたままである。これでは背後から忍び寄る邪鬼に気づくことすらできまい。僕はその間抜けな姿を眺めながら、由緒ある禅宗の寺も随分とふざけた趣向を凝らすものだと呆れていた。
そのふざけた趣向について少し調べてみると、僕の的外れな誤解はあっさりと解けた。このフクロウ像の役目は、金剛力士のような護法善神とは根本的に違うらしい。仏法や信者を守るという崇高な目的ではなく、単に歴史ある建物をハトのフン害から守るために置かれているのだそうだ。境内を外敵から守っているという意味では同じかもしれない。しかし、その敵が仏敵ではなく、ただのハトやカラスに特定されているというだけの話である。荘厳な寺院の入り口に、ホームセンターで売っていそうな実用的な鳥よけグッズを平然と置くあたりが、なんとも身も蓋もなくてよろしい。
| 2016年8月 神奈川 静物 | |
| 鳥 鎌倉 像 寺院 |
No
9853
撮影年月
2016年5月
投稿日
2016年08月27日
更新日
2026年05月01日
撮影場所
建長寺 / 神奈川
ジャンル
静物写真
カメラ
SIGMA DP2 MERRILL