線路の脇にいる人びとがそわそわしていたのでそうではないかと思っていたのが、どこからともなく汽笛が聞こえてくると確信に変わった。向こうから、力強く煙を吐き出しながら黒い物体が線路の上を進んでいくる。秩父鉄道が運行する蒸気機関車牽引による臨時急行列車だ。
速度を落としながら御花畑駅に入っていく蒸気機関車は圧巻だった。踏切のところに立って必死に手を振る幼い男の子たちに向かって、優雅に手を振り返す運転士からは貫禄さえ感じる。
ところで話は御花畑駅だ。駅名とは裏腹に駅の周りにお花畑は存在しない。それなのに駅名からは駅舎がお花畑の中にポツンと立っている姿を想像してしまう。ちょっとした詐欺のようだ。なんだか富士山から遠いのにまるで富士山の麓にあるかのように錯覚させる上毛電気鉄道上毛線の富士山下駅に似ているものを感じる。
なんでもここでいう御花畑とは秩父神社の例大祭「秩父夜祭」で使用される御旅所を差しているらしい。御旅所とは神社の祭礼で神体を乗せた神輿が巡行の途中で休憩または宿泊する場所のこと。この御旅所が古くから「御花畑」と呼ばれていたためにそのような駅名が付けられたのだそうだ。でもなんでだろう。本当は綺麗な呼称であるはずなのに、いつの頃からかお花畑という言葉にちょっと馬鹿にしたニュアンスも感じてしまうになってしまっている。
2021年12月 埼玉 乗り物 | |
男の子 秩父 線路 踏切 列車 |
No
12117
撮影年月
2021年10月
投稿日
2021年12月11日
更新日
2023年08月16日
撮影場所
秩父 / 埼玉
ジャンル
鉄道写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35