東京大学の副学長でもあった吉見俊哉が書いた「東京裏返し」という本によると、東京は速い都市を目指す中で、大動脈としての首都高速道路を都心を流れていた川や運河の上に作ってきたのだという。その結果、都心を流れる川は暗渠になったり、その上に蓋をするかのように高速道路が走っていたりする。河川と水路の上に作れば道路用地を買収する必要がないから、急ピッチで敷設できる上に費用も安上がりだったのだろう。
九段と神保町の境目を流れる日本橋川の上にも、覆いをかぶせるように首都高速道路が伸びている。飯田橋付近で神田川から分かれた日本橋川はほぼ全流路に渡って首都高速道路の高架下を流れている。神田川から分岐した直後から雉子橋までは首都高速5号池袋線が、雉子橋から江戸橋までは首都高速都心環状線が、江戸橋より下流は首都高速6号向島線が川を覆っている。ようやく空が拝めるのは、隅田川への合流点に近い茅場橋付近になってから。地図を見ても、ずっと川の上に高速道路が描かれているので川の存在に気が付くのは難しいくらいだ。
日本橋川に架かる宝田橋の上に立ち止まっていた。すぐ上には首都高速が圧をかけてくるかのように迫っている。強い日差しもここには届かない。なんだかトンネルの中にいるようだった。千代田区役所方面に目を向けると、強い日差しの中を急ぎ足で歩く女性の姿が見えた。
2021年8月 町角 東京 | |
高速道路 九段 シルエット |
No
12014
撮影年月
2021年2月
投稿日
2021年08月30日
更新日
2023年08月18日
撮影場所
九段 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III