参拝客が靖国神社の第二鳥居をくぐる前に深々とお辞儀をしていた

鳥居の前で深々とお辞儀をする参拝客
靖国神社の第二鳥居

緩やかな傾斜になっている靖国通りをトボトボと登っていく。地下鉄の九段下駅から靖国神社の境内までは、歩いてすぐの距離だ。参道の入り口に立つと、最初に目に飛び込んでくるのは、見上げるほどに巨大な第一鳥居である。高さは25メートルもある。大正の大震災のあとに日本初の鋼鉄製の鳥居として再建されたらしい。あまりに大きすぎて、なんだか工場の煙突を見上げているような妙な気分になる。神聖な結界というよりは近代建築の遺物のようにも映るが、とにかくその巨大な鉄の門をくぐり、広い参道へと進んだ。

著者 : 島田裕巳
幻冬舎
発売日 : 2014-09-19

その巨大な鉄の門をくぐり抜けて、近代日本陸軍の創始者とされる大村益次郎の銅像を横目に先へ進むと、今度はどっしりとした青銅製の鳥居が現れる。先ほどの第一鳥居よりは一回り小さい。しかし、明治20年に建てられたこの第二鳥居も、青銅製の鳥居としては日本最大級の大きさを誇る。当時の大阪砲兵工廠、つまり大砲を作る工場で鋳造されたという、なんとも物々しい出自を持っているのだ。僕はその歴史の重みにうかつに圧倒されるような真似はせず、鳥居の脇に立ち止まった。そして、その下を行き来する参拝客をぼんやりと眺めていた。神社庁のホームページなどを見ると、鳥居をくぐる際は目上の方の家を訪問するような気持ちで一礼するのが丁寧な作法であると書かれている。しかし、行き交う人々がみな熱心にお辞儀をしているわけではない。現に僕などは、いつも頭を下げるのを忘れてそのまま通り抜けてしまう罰当たりな人間だ。

そんな僕のような罰当たりな人間が多数派だろうと高を括っていると、一人の女性が鳥居の前にやって来て立ち止まった。彼女は、リュックを背負ったまま、巨大な柱の陰で実に見事に深々とお辞儀をしていた。その所作には周囲を気にするような照れや不自然さは微塵もない。青空に向かって真っ直ぐ伸びる黒い巨木の傍らで、どこか不思議な調和を保っている。他人の信心深さにうかつに感動して神妙な顔をするのは僕の趣味ではない。ただ、自分の普段のいい加減な立ち振る舞いを少しばかり省みた。

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ENGLISH
2019年10月 人びと 東京
九段 お辞儀 鳥居 参拝客 靖国神社

PHOTO DATA

No

11229

撮影年月

2019年4月

投稿日

2019年10月09日

更新日

2026年06月16日

撮影場所

靖国神社 / 東京

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

RICOH GR III

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