台南の町を歩いていると、寺院に行き当たることが多い。最初のうちは、その中国様式の荘厳な建築に目を奪われ、興味津々で眺めていた。しかし、次第にその感覚は薄れ、どの寺院も似たように見えてくる。
確かに日本の神社仏閣とは異なり、色鮮やかな装飾や龍の彫刻が目を引くのだけれど、それがあまりに日常的な光景になってしまうと、新鮮さは薄れてしまうものだ。
そんなことを思いながら住宅街の細い路地を歩いていると、ふとした角を曲がった先に、またしても小さな寺院が現れた。朱塗りの門の奥には、香炉の煙が漂い、ほのかに線香の香りが漂ってくる。
もはや、ここに祀られている神様の種類にはあまり関心がない。ただ、足を止めてお参りをする人々の姿を眺めるだけだ。
一人の女性がゆっくりと目を閉じ、合掌している。微動だにせず、心を静かに整えているのが伝わってくる。その姿はまるで、この喧騒の町の中にぽっかりと開いた静寂の空間のようだった。
台南では、どんなに小さな寺院であっても参拝客が絶えない。それが朝であろうと、昼であろうと、あるいは夜であろうと、誰かが香を手に取り、祈りを捧げているのだ。
この町の人々にとって、寺院は単なる観光地ではない。そこは日常の一部であり、静かに心を整える場所なのだろう。
何気なく通り過ぎるだけの寺院も、そこにいる人々の姿を見ることで、その土地の空気を感じることができる。台南の路地に溶け込んだ寺院は、そんな小さな発見を与えてくれる場所だった。
2017年2月 人びと 台湾 | |
香炉 台南 寺院 参拝客 |
No
10046
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年02月20日
更新日
2025年02月25日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA