台湾府城隍廟の境内をウロウロと歩き回っていた。ここに祀られている城隍爺は、地域の守護神でありながら、死後の世界を管理するとされる神様だ。無病息災や商売繁盛の御利益があると信じられているらしく、参拝客が訪れている。台南には多くの寺院が建っているけれど、商売繁盛しているのは御利益を求めてやって来る参拝客ではなくて、祀られている神様たちそのものなのかもしれない、などと思ってしまった。
境内は静まり返っていた。ここでも、ちらほらと参拝客の姿が見える。奥まった場所に置かれた大きな香炉が目に入った。けれど、周囲には誰もいないし、香炉から煙が上がる気配もない。この寺院にはいくつもの香炉が点在しているので、きっとこの場所でお参りをする人は少ないのだろう。
じっと香炉を眺めていると、向こうに男の姿が見えた。丸い穴越しに男が歩いている。手にはプラスチックの盥を持っていて、その中に薬缶が収まっているのが見えた。男がどこへ向かおうとしているのかは分からなかったけれど、その動作には妙な落ち着きが感じられた。それは、寺院の静けさとぴったりと溶け合っているようだった。
2017年5月 町角 台湾 | |
盥 穴 香炉 薬缶 台南 寺院 |
No
10132
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年05月06日
更新日
2024年12月09日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA