チョロンの一角にある温陵会館は、華人系住民によって建立された由緒ある寺院だ。境内に足を踏み入れると、そこには中国様式の建築特有の密度があった。軒下から吊るされた細工の施された灯籠、壁に刻まれた漢字、そして何よりも、堂内にずらりと並ぶ祭壇が印象的だった。
祀られているのは、観世音菩薩だけではない。媽祖や財神、土地神など、仏教と道教が混ざり合った神々が、さまざまな形で安置されている。それぞれの祭壇には香炉が据えられ、参拝者たちはその前で静かに祈りを捧げていた。
写真に写っている女性も、そんな参拝者のひとりだ。彼女は、両手に束ねた長い線香を持ち、香炉の前で慎重に立っていた。日本の寺院で見かけるような短い線香とは違い、この場所で用いられる線香は30センチを超えるものも多い。線香から立ちのぼる煙が、柔らかく光を含みながら、空中でかすかに揺れていた。
2009年6月 人びと ベトナム | |
ホーチミン市 香炉 線香 煙 寺院 女性 |
No
2862
撮影年月
2009年3月
投稿日
2009年06月06日
更新日
2025年06月16日
撮影場所
ホーチミン市 / ベトナム
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM