すっかり観光地へと変貌したかつて植民地支配の中心地から離れるにつれ、観光地らしさは見る見るなくなっていく。ジャカルタでオランダ東インド会社が作った町並みが綺麗に保存されている区画はそれほど広くはない。重厚な建造物が立ち並ぶファタヒラ広場から少し歩くだけで、ところどころに由緒ありそうな古い建物が残っているものの、総じて町並みどこにでもあるような何の変哲のないものに移ろいでしまった。そこにはもう楽しそうに浮かれている人びとはいない。日常生活が転がっているだけだ。
東南アジアでは珍しくない、店先にミシンが置かれている店舗の前にやって来た。このような状況で置かれているのは足踏み式のミシンであることが多いのだけれど、ここはちょっと違った。モーターの付いたミシンだった。設置されたテーブルの下には大きなモーターがその存在を自己主張していた。メーカーもよく見るSINGERではなくてTYPICALというメーカーのものだった。
業務用のごついミシンを前に腰掛けていた男は、ちょうど仕事もなくて暇だったようだ。カメラを抱えて歩く僕にすぐに気がついた。そして、楽しそうに親指を立ててくれたのだった。
No
11523
撮影年月
2020年1月
投稿日
2020年05月12日
撮影場所
ジャカルタ / インドネシア
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF