商店街には仕立て屋も店を構えていた。男が店先に出したテーブルに、年季の入ったミシンを載せて、カタカタカタと縫製をしている。日本でも洋服の直しをしてくれる店があるが、ここムンバイでも同じようなニーズがあるのだろう。路上にミシンを持ち出して作業をする姿は、日本ではほとんど見かけないが、この街ではごく当たり前の光景のようだった。
そもそも綿花の栽培や、綿布・綿織物をつくる技術の起源は、インダス文明にまで遡る。16世紀にポルトガル人がインドに到達すると、インド産の綿布がヨーロッパへ供給されるようになり、後にインドを支配下に置いたイギリス東インド会社が本国へ大量に持ち帰った。その結果、インド産の綿織物は積み出し港の地名カリカットに由来し、「キャラコ(キャリコ)」と呼ばれるようになったのだという。そんな長い歴史を背負いながら、いま目の前でミシンを動かすこの仕立て屋の男もまた、遠い過去とつながっているのかもしれない。
2025年3月 インド 人びと | |
チェック柄のシャツ 眼鏡 ムンバイ ミシン |
No
12820
撮影年月
2024年5月
投稿日
2025年03月01日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF