住宅街の中の道端に老婆が腰を下ろしていた。ジャカルタの住宅街の中で、ひとりで腰を下ろして何をしていたのかは分からない。じっとしたままだったので、ただ単に往来を眺めながらくつろいでいただけなのかもしれない。そう、老婆は何をする訳でもなく、ぼんやりと往来を眺めていたのだ。そして、その視線は通りかかろうとしていた僕にももちろん向かってきた。
視線に導かれるままに、老婆の前に立ち止まった。手に持ったカメラを見せると、老婆は何も発することはなかったけれど、静かに肯く。それを見てレンズを向けると、老婆もじっとカメラを見据えてくれた。僕も老婆も無言のまま、レンズを挟んでしばし向かい合っていた。
ジャカルタはイスラム教徒が多数を占める町だけに、ヒジャブをかぶっている女性は多い。この老婆もヒジャブのようなものをかぶっていた。日頃から太陽の下で仕事をしている人なのだろうか。ヒジャブから出ている顔には深いシワが何本も走っている。人生の年齢が深く刻まれた顔でじっと見つめられると、なんだか心の中を見透かされているような気がした。
2020年8月 インドネシア 人びと | |
白髪 ヒジャブ ジャカルタ 老婆 |
No
11646
撮影年月
2020年1月
投稿日
2020年08月23日
更新日
2023年09月01日
撮影場所
ジャカルタ / インドネシア
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF