ジャカルタの住宅街を歩いていると、ただただ座っているだけで何をしているのか分からない人をよく見かけるけれど、この男は何をしているのか分かりやすかった。大きな車輪の付いたワゴンを押していた男は、どこからどう見ても行商人だ。
男が押していたワゴンは水色と白と赤に塗られていて可愛らしい。その色の組み合わせは、まるでロシア国旗のようだ。いや、オランダ国旗かな。それともルクセンブルクの国旗かもしれない。ふと考えると、ロシアとオランダとルクセンブルクの国旗はとても似ている。
三色で表される国旗というとフランスのトリコロールを真っ先に思い浮かべるけれど、世界で最も古い三色旗はオランダの国旗だ。オランダを支配していたスペイン王フェリペ2世に対して、オラニエ公ウィレム1世が蜂起した際に使用したオレンジ・白・青の三色旗がその起源なのだという。そして、ロシアやルクセンブルグの国旗も、その三色の組み合わせに影響を受けているという説もある。
ジャカルタの住宅街を縄張りとしている行商人が、かつての宗主国であるオランダの国旗をモチーフにしているとは考えづらい。たまたま良い感じの配色を考えていたら、オランダ国旗と同じような配色になってしまったのだろう。ただオランダ国旗と全く同じ配色だと不愉快だから、ルクセンブルグ国旗と同じように青を明るい水色に変えたのかもしれない。
オランダの国旗は、水平三色旗。世界最初の三色旗(トリコロール)といわれ、様々な国旗に影響を与えた。なお、この旗は縦に掲揚してはならない。15世紀末にネーデルラントのほとんどの州がブルゴーニュ公国の下で統一されたときの旗は、白地に月桂樹の枝がクロスされたものだったが、スペイン王フェリペ2世に対してオラニエ公ウィレム1世が蜂起した際に使用したオレンジ・白・青の三色旗が「プリンスの旗 (Prinsenvlag)」と呼ばれた。この旗が八十年戦争でも使用された。16世紀末までは三色の順序も決まっていなかったが、徐々にこの順に統一された。1630年以降はオレンジが赤に置き換えられてきた。その理由は政治的なものは特になかったが、オレンジと青は特に海上で色あせやすいため濃色の赤や青に変えられたとされる。もしくはオレンジは薄いため海上で識別しにくい(黄色や金色などと見間違えられやすい)ためとも言われている。
No
11647
撮影年月
2020年1月
投稿日
2020年08月24日
撮影場所
ジャカルタ / インドネシア
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF