駒込にある東洋文庫には垂涎の的になるような本棚のある書庫がある。2階分くらいの高さのある壁がびっしりと本棚になっているのだ。本好きの僕にとっては憧れの空間だ。
東洋文庫は東洋史と文化に関する文献資料を収集した東洋学専門図書館で、そのミュージアム部分に設けられているモリソン書庫がその空間だ。ここには東洋文庫の創設者である岩崎久彌が北京駐在のモリソン博士から1917年に購入した東アジアに関する欧文の書籍・絵画・冊子等約2万4千点が展示されている。
貴重な本が並ぶ書庫の書籍を手で触れることはできない。そのため背表紙のタイトルから内容を想像するしかない中、僕が惹かれたのはケース内に展示されていた「台湾誌」という書籍だった。1704年にロンドンで出版された台湾について書かれた偽書だ。著者ジョルジュ・サルマナザールは、フランス生まれで台湾に行ったことさえないのにもかかわらず、自らを台湾人と偽り、台湾に関する書物を記した。それが台湾誌だ。
服装や食生活、儀式や風習、政治体系、生活様式など、詳述されている内容はすべてサルマナザールによる創作という力作。でたらめなのに台湾の専門家としての名声を獲得してしまったサルマナザールは、一時期オックスフォード大学で学生たちへ講義を行うほどだったのだという。その空想力を小説に使えば、歴史に残る小説を書けたのではないかと思ってしまう。
2021年7月 静物 東京 | |
本 駒込 博物館・美術館 棚 |
No
11955
撮影年月
2020年12月
投稿日
2021年07月02日
更新日
2023年08月21日
撮影場所
東洋文庫 / 東京
ジャンル
静物写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF