ゆっくりと進んでいるとはいえ、そこは列車だ。僕の目の前を通り過ぎて、見えなくなってしまうまでにそれほど時間は要しない。あっという間に列車は行ってしまった。楽しみにしていた瞬間はすぐに過ぎ去ってしまう。列車が走り去るやいなや、じっと列車をやり過ごしていた人びとが動き出す。お店の人たちはせっせと線路の上に商品を並べ始め、庇を線路上まで伸ばしている。あれよあれよという間に線路の上は元通りのマハーチャイ線路市場へと戻っていた。あまりにも早く変貌したので、ついさっきここを列車が通り過ぎたのがまるで白昼夢であったかのような気がしてしまう。
店主たちは何事も無かったかのように商売を再開していて、買い物客はのんびりと線路の上を行き来している。市場の中を真っ直ぐに伸びる線路以外に列車が走った残滓は残っていない。僕も再び線路の上を歩き出した。目の前にはカートを押した男が現れた。この男も何食わぬ顔をしているけれど、どこかで列車が通り過ぎるのをやり過ごしていたのだろう。
2018年7月 町角 タイ | |
荷車 メークロン メークロン線 市場 線路 |
No
10651
撮影年月
2017年9月
投稿日
2018年07月17日
更新日
2024年02月07日
撮影場所
メークロン線路市場 / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA