ロンジーをはいた男が小さな店の前でにんにくの皮を剥いていた

市場の中は混雑していなかった。すぐ外に立っていた露天市に大勢の買い物客が訪れているのとは対照的だ。ここでは人びとは客寄せの口上を上げるわけでもなく粛々と働いている。見たところ買い物に来ている人よりも、働いている人の方が多いような印象を受けるくらい、市場の中は穏やかな雰囲気に包まれていた。

市場の通路をウロウロとしているうちに、小さなお店の前へとやってきた。大きな籠が幾つか置かれていている。奥の籠には玉ねぎが入れられていて、手前の籠にはニンニクが入れられているようだ。そして、ロンジーを履いたふたりの男が店先にいる。ひとりはどっしりと店先に腰を下ろして、のんびりとスマホをいじっている。特にやるべき仕事がないような感じだった。もうひとりは籠の傍らに立って、せっせとニンニクの皮を次から次へと剥いている。スマホをいじっている男は皮を剥いている男を手伝おうとするような雰囲気は微塵もない。ふたりの様子は対照的だった。

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