慶應義塾大学三田キャンパス東館の中央には大きなアーチ状のアーケードが設けられている

慶應義塾大学三田キャンパス東館
慶應義塾大学三田キャンパス東館

三田の国道1号、いわゆる桜田通り沿いを歩いていると、いかにも由緒ありげな赤レンガ風の大きな建物が目の前に立ちはだかった。慶應義塾大学三田キャンパスの東館である。壁面に赤い煉瓦が美しく並び、いかにも歴史の重みを感じさせる高貴な外観だ。しかし、騙されてはいけない。この建物が竣工したのは西暦2000年のことである。建てられてからまだ二十数年しか経っていない、いわばハッタリのレトロ建築なのだ。同じキャンパス内には、明治時代に建てられて重要文化財にも指定されている慶應義塾図書館・旧館や三田演説館といった、100年以上の歴史を誇る本物の古豪がひかえている。それらに比べれば、この東館などまだ墨の乾かぬ洟垂れ小僧のような存在に過ぎない。

著者 : オバタカズユキ
小学館
発売日 : 2018-06-04

その洟垂れ小僧のような新参者の建物において、僕の目を引いたのは外壁の意匠などではなく、中央にぽっかりと開いたアーチ状の巨大な開口部であった。人が通り抜けて門をくぐるだけなら、わざわざビルを数階分もぶち抜くような、こんな大層なアーケードを設ける必要はどこにもない。普通に建物の1階部分に通路を作れば済む話である。建築の世界では、こうした建物の下部をぶち抜いた柱廊をポルティコなどと呼ぶらしい。わざわざそんな建築費のかさみそうな空間をここにこしらえたのには、何か深い目論見があるはずだと、僕はへそ曲がりな勘繰りを始めた。

その何か深い目論見がありそうな巨大な空洞の正体を探るべく、僕は通りの反対側に立ち、横断歩道越しに建物をじっくりと眺め直してみた。すると、薄暗いトンネルの向こう側に、先ほど挙げた本物の歴史的建造物である図書館・旧館の美しい赤レンガが、ピタリと額縁に収まるように垣間見えたのである。図書館といえば、まさに大学における知の象徴だ。つまりこの大層な仕掛けは、象牙の塔にこもる学問の光を、広く一般の往来に向けて誇示するための演出だったわけだけれど、手前の日常的な横断歩道では、日傘をさした人々が何食わぬ顔で歩いていた。

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ENGLISH
2022年12月 建築 東京
アーチ 煉瓦 三田 横断歩道

PHOTO DATA

No

12406

撮影年月

2022年8月

投稿日

2022年12月01日

更新日

2026年06月18日

撮影場所

三田 / 東京

ジャンル

建築写真

カメラ

SONY ALPHA 7R II

レンズ

ZEISS LOXIA 2/35

日本国内で撮影した写真

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