沖縄の那覇にある公設市場を歩いていると、肉屋の店先に衝撃的な光景が広がっていた。巨大な豚の頭が堂々と陳列されているのである。これは「チラガー」と呼ばれるもので、沖縄では珍しくもない日常的な光景だ。しかもそのチラガーにはサングラスが掛けられており、まるで観光客を出迎えるゆるキャラのように見える。頭だけになってなお、どこかご機嫌そうで、愛嬌すら漂わせているのだから、豚という生き物も不思議なものである。
沖縄の食文化は日本本土と比べても独特である。江戸時代、本土では仏教の影響もあり肉食があまり一般的でなかったが、沖縄では「鳴き声以外はすべて食べる」と言われるほど豚肉の利用が徹底していた。耳は「ミミガー」として酒の肴になり、顔はチラガー、内臓も余すところなく調理される。まさに豚は「鳴き声以外は全部食べる」と言われる所以である。ちなみに、チラガーは煮付けや酢味噌和えにされることが多く、観光客向けの居酒屋でもよく目にする。
この光景を初めて見る旅人にとっては、やや度肝を抜かれるに違いない。しかし、公設市場のチラガーは単なる食材であると同時に、沖縄の文化そのものを体現するシンボルでもある。サングラスを掛けたその豚の頭が「いらっしゃい」と言わんばかりに笑っているように見えるのは、こちらの心のほうが勝手に反応しているだけなのだろう。
2007年7月 食べ物 沖縄 | |
頭 市場 那覇 豚 豚肉 サングラス |
No
987
撮影年月
2007年6月
投稿日
2007年07月29日
更新日
2025年09月08日
撮影場所
那覇 / 沖縄
ジャンル
食物写真
カメラ
RICOH GR DIGITAL