住宅密集地の端にやってきた。この向こうには大きな通りが走っていて、もう住宅は続いていない。迷い込んだジャカルタの住宅密集地は歩いていたらすぐに歩き尽くしてしまう小さいものだったのだ。
そんな街角にボロボロの古い木製のベンチが置かれていた。赤い服をまとった女の子がその上で寝ていた。サンダルも脱いでうつ伏せに寝ていた女の子は不貞腐れていたようで、そこでうだうだしていたのだ。だからと言って、自分ひとりの世界に引きこもっていじけていたわけでもない。視線は往来に向いていた。相手をしてくれる人を探していたのかもしれない。そうこうしているうちに、女の子の視界の中に見知らぬ外国人が入ってきたのだった。
女の子の視線はカメラを抱えた外国人に釘付けだった。外国人が珍しかったのかもしれないし、カメラが珍しかったのかもしれない。いずれにしてもベンチの上に寝転がったまま、じっと僕を見ていた。近寄ってカメラを向けても、頭を上げることはなかった。けれど、視線はまっすぐに僕に向いたままだ。ジャングルの山奥でもあるまいし、カメラを携えた外国人などそれほど珍しいものではないと思うのどけれど、この女の子の瞳の中では珍獣のように映っていたのかもしれない。
2021年3月 インドネシア 人びと | |
ベンチ 女の子 ジャカルタ バイク サンダル 裸足 |
No
11860
撮影年月
2020年1月
投稿日
2021年03月29日
更新日
2023年08月25日
撮影場所
ジャカルタ / インドネシア
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF