台湾のレトロな下町風情が残る台北の大龍峒(だいりゅうどう)へと足を運び、保安宮にやって来た。ここは医学の神様である保生大帝を祀る由緒ある道教の寺院だ。病気平癒を願う人々でいつも賑わっている。お堂の入口のすぐ横には、一対の大きな石の彫刻が置かれていた。日本でいうところの狛犬に相当する、魔除けの像である。そもそも狛犬のルーツを辿ると古代オリエントのライオンに行き着くらしい。それがシルクロード経由で中国に伝わって石獅子となり、さらに日本へ渡って独自の進化を遂げた。つまるところ、この目の前にある像は日本の神社の境内にいる奴らの遠い先祖にあたるわけだ。
その遠い先祖にあたる由緒正しきはずの狛犬なのだが、その出で立ちはどうにも頼りなく、かなりユーモラスであった。日本の狛犬はもう少し厳めしい顔をして睨みを利かせているものだ。しかし、この保安宮の番人は、まるで信じられないほど奇妙なものでも目撃したかのように、大きく目を見開いている。おまけに口までこれまた大きく開けているのだ。境内に邪悪なものが侵入するのを防ぐという重大な任務を背負っている割には、緊張感がまるで足りない。驚き呆れたようなマヌケな表情をしており、見ているこちらが少し心配になってしまう。そんな見ているこちらが心配になるほど冷静さを欠いた狛犬の横を、帽子をかぶった地元の男性が、何食わぬ顔でトボトボと通り過ぎていった。
| 2007年4月 静物 台湾 | |
| 人影 狛犬 台北 寺院 |
No
833
撮影年月
2007年1月
投稿日
2007年04月09日
更新日
2026年06月12日
撮影場所
台北 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V