伝通院のすぐ近くに慈眼院という寺院がある。内陣も外陣も総檜造で、向拝は総欅造だと言われても、1961年に再建された本堂は正直なところそれほど見応えのあるものではない。それよりも本堂に向かって右手にいった先にある窪地に、この寺院の一番面白いところがある。
そこは慈眼院が別当寺になっている澤蔵司稲荷があるところ。階段を下りた先の窪地の底に鳥居が幾重にも建てられていて、「おあな」と呼ばれる祠が鎮座している。澤蔵司とは人間になりすまして伝通院の学寮で学び、わずか3年で教義を究めたとされる狐だ。究めた後に高僧の夢の中に現れ、「自分は千代田城内の稲荷大明神であり、長年の望みだった浄土の奥義を究めることができた。これからは元の稲荷神に戻るが伝通院の守護神となって恩に報いたい。」と告げたため、この場所に澤蔵司を祀った祠が造られたのだ。
狐がわずか3年で浄土宗の教義を究めるまでになったという伝承自体も興味深いものの、狭い場所に鳥居が連なっている光景も充分に興味深い。見ていると霊気の吹き溜まりに鳥居が立っているかのよう。何かが出て来てしまわないように、窪地の底に鳥居を配置して封印しているようにも見えてしまう。村上春樹の「かえるくん、東京を救う」に登場するかえるくんのように見えないところで守ってくれている鳥居なのかもしれない。
2022年5月 町角 東京 | |
小石川 赤 神社 鳥居 |
No
12271
撮影年月
2022年3月
投稿日
2022年05月20日
更新日
2024年02月02日
撮影場所
小石川 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35