インターネットはおろか電話や無線が実用化されるまで、周囲の人に物事を伝えるのは思いの外難しかったに違いない。スマホがあればメッセージを一斉送信すれば足りるようなことや、スマホがなくても電話があれば電話連絡で済むようなであっても、どちらもなければ大きな音や声で伝えなければならないのだ。
イスラム教世界において、周辺に伝えなければならぬことの筆頭は礼拝の始まりだ。一日の礼拝は早朝の礼拝、正午過ぎの礼拝、遅い午後の礼拝、日没後の礼拝、そして就寝前の礼拝の5回あり、それぞれの時間が訪れるとモスクのミナレットの上からアザーンと呼ばれる礼拝の呼びかけが始まる。今ではスピーカーから流される。けれど、かつては人が少しでも遠くに響くようにミナレットの上部から大きな声で呼びかけていたのだ。
法要や儀式の開始を周囲に知らせる必要があるのは、ここ京都にある西本願寺でも同じだっただろう。御影堂から阿弥陀堂へ繋がる渡り廊下を歩いている時に、ふと横を見ると向いの建物に鐘が釣られているのが見えた。それほど大きな物ではないから喚鐘かもしれない。喚鐘だとすると、法要や儀式の開始時に打たれる鐘だ。西本願寺ではインターネットや無線通信の普及した今でもこの鐘を定まった形式で鳴らして法要や儀式の開始を周囲に伝えているのだ。
2021年4月 京都 静物 | |
ベル 廊下 京都市 屋根 寺院 世界遺産 |
No
11872
撮影年月
2020年2月
投稿日
2021年04月10日
更新日
2023年08月24日
撮影場所
西本願寺 / 京都
ジャンル
静物写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF