バンコク(タイ)
まるで時間が止まってしまったかのような路地で、唯一動いていたのはテーブルで書き物をしている女性の手だけだった
多くの人が大きな荷物を持って、お目当てのソンテウがやって来るのをじっと待っていた
バンコクの日差しは強く、日傘を差して歩いている人も時折見かける
ソンテウ乗場に停まっていたソンテウの荷台には、すでに大勢が乗り込んでいた
他のソンテウと違って、このトラックの荷台には屋根が備え付けられていなかった
バンコクでソンテウという乗り合いバスを利用する人は多い
ソンテウ乗場は路地裏でターミナルと呼べる代物はなく、待合室のような場所も見当たらなかった
キャンベルのスープ缶と紛らわしい配色の缶は、カーネーションという会社の缶入り牛乳だった
女性たちが大量の荷物とともにソンテウに乗っていた
女性にとってキャベツとニラは照れ隠しの小道具のようだった
ポーンプラープ区(バンコク)
若い女性が財布だけを片手に持って昼食を買い求めているのは、バンコクも東京と同じだった
それなりにバンコクの中心に位置しているはずエリアなのに喧騒とは無縁だった
料理人が動作をシンクロさせながら忙しそうに炒め物を作っていた
観光名所になっていないポーンプラープ区の路地の奥に、人気の食堂があった
セーンセープ運河沿いに建つ民家に干してあった洗濯物がはためいていた
ASEAN諸国の発展の裏にはエアコンという文明の利器の普及が欠かせなかったと思う
ワット・サケット(バンコク)
ワット・サケットのある黄金の丘と呼ばれる人工の丘を下りると、そこは工事現場だった
丘の真中と思われる場所に黄金の仏像が安置されていて、ひっきりなしに参拝客が訪れる
アユタヤ時代からあるワット・サケットの縁起はよく分からないらしい
日本と違ってタイの仏教寺院にはふんだんに黄金が用いられている
バンコクには高層ビルももちろん建っているのだけれど、ワット・サケットの周囲には近代的な高層ビルは建っていない
漆黒の喪服とカラフルな日傘と青空のコントラストが美しかった
バーン・バート(バンコク)
バーン・バートの路地で女性が托鉢用の鉢を叩いていた
バーン・バートと呼ばれるエリアは、タイで唯一今でも手で托鉢用の鉢を作っている場所だ
赤ちゃんが付けているおむつは紙おむつではなく、布のおむつだった
屋台に毛が生えたくらいの食堂にもテーブルの上には砂糖、ナンプラー、粉トウガラシ、お酢の4種類が置かれている
プラクルアンを付けた男が僧侶が托鉢に使う鉢を作っていた
僧侶が修行で使う托鉢用の鉢も、俗世間にまみれた環境の中で造られていた
プラナコーン区(バンコク)
二人がテキパキと準備していた厨房にピーラーの音と包丁の音が規則正しく響いていた
ブランチという言葉は、英語の朝食を意味するBreakfastと昼食を意味するLunchの混成語だ
プレーン・プートン通り(バンコク)
バンコクでは日本と違ってクリーニング屋とアイロンがけ屋は別の職業なのかもしれない
プレーン・プートン通りは昔の町並みが残っているところだけれど、歩いている観光客はほとんどいない
寝そべっていた猫が僕を見詰める表情は、よそ者を問いただしている顔だった
のどかな夕暮れ時に忙しそうにしている人は誰もいなかった
外食文化が進んでいるから、女性がひとりで外食する機会も多くなるに違いない
太陽が燦々と降り注ぐ道よりも、ちょっと陰気な道の方を自然と選んで歩いてしまうのは僕の性なのだろう
食生活は母系で遺伝するという説の証拠のような親子が玄関先に腰を下ろしていた
タイ経済が華僑に牛耳られているのかはわからないけれど、バンコクを散策していると華僑の経営するお店が目につくのは本当だ
休憩をしている女性の視線は真っ直ぐにスマホの画面に向けられていた
忙しそうに働いている人が多い路地を、買い物をするつもりのない僕が歩くのは働いている人の邪魔をしているような気がしてしまう
魚売り
乗客
老人
仏像
橋
花