タイのバンコクで撮影。
歩いている最中にふらっと覗いた路地の片隅に木製のテーブルが出ていた。年季の入ったテーブルだった。日陰になっているテーブルの上では男が胡座をかいている。そして、その脇では女性が何か書き物をしていた。路地は静けさに包まれている。テーブルの下には古タイヤが転がっていて、奥にはバイクが駐められている。それ以外にも雑多なものが路地には置かれていた。路地の先の方には男が立っているのも見える。
でも、その全てがじっとしたまま動いていない。まるで時間が止まってしまったかのようだった。唯一動いているのは、テーブルで書き物をしている女性の手だけだった。そのような静けさの中で、僕は照りつける日差しの音が聞こえてくるような気がした。カンカンに照りつける太陽の光は、この路地にもしっかりと入り込んできている。容赦なく入り込んだ日差しは、路地にあるもの全てを気怠さに包み込んでいるようだ。路地には物憂げな雰囲気が充満していた。