足を踏み入れた路地は薄暗かった。太陽が燦々と降り注ぐ道よりも、このようなちょっと陰気な道の方を自然と選んで歩いてしまうのは僕の性なのだろう。路地の両脇に立っている建物のほとんどは民家のようで、お店や食堂の類は見当たらない。道端にはバイクやワゴンが駐められている。家々も静まり返っているし、バイクも静かに英気を養っているようだった。さっきまで雨が降っていたからだろうか、路地で寛ぐ人の姿もほとんどない。僕は誰にも会うことなく、黙々と路地を進むしかなかった。
そうこうしていうちに、路地の先に人影を見つけた。男の人影は箒を手にしていて、路地の隅から隅までを掃いている最中のようだ。雨が上がったところを見計らって、掃除を始めたのかもしれない。僕には濡れた路面はもう充分綺麗なように見えるけれど、男にとってはまだまだ不十分のようだ。黙々と掃き続けている。薄暗い路地に男が箒を掃くザッザッという音だけが響き渡っていた。
2018年3月 町角 タイ | |
路地 バンコク 箒 シルエット |
No
10487
撮影年月
2017年9月
投稿日
2018年03月20日
更新日
2024年03月07日
撮影場所
バンコク / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA