スワヤンブナートの境内を掃除している女性たちがいた。ネパールの首都カトマンズを見下ろす丘の上にあるこの仏教寺院は、世界遺産にも登録されている由緒ある聖地だ。だが、聖地も人の手が入らねば、すぐに埃にまみれてしまうらしい。境内には小さな仏像、燭台、鐘、果ては観光客の落とした紙くずまでが散らばっていて、掃除を完遂するのは至難の業だろう。
とはいえ、女性が仏像の上にどっかり腰を下ろして磨いている光景には、少々たじろいだ。信仰とは柔軟なものである。仏陀もこのくらいのことでは怒らないかもしれないが、さすがに足の裏を見せられては、少しくらい眉をひそめるだろう。そばで見上げている少年の顔には、敬意とも好奇心ともつかぬ複雑な表情が浮かんでいる。
ここでは日常と信仰が渾然一体となり、聖も俗も入り混じっている。聖域の頂で雑巾を手にする人の姿ほど、信仰の現実味を帯びたものはないと感じた。
| 2009年11月 ネパール 人びと | |
| 仏像 掃除 親子 サリー スワヤンブナート 世界遺産 |
No
3386
撮影年月
2009年6月
投稿日
2009年11月16日
更新日
2025年10月22日
撮影場所
スワヤンブナート / ネパール
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM